飛距離の問題

2月4日、ゴルフを統括するUSGAとR&Aが、2年前より調査を進めている飛距離に関する調査について調査結果を発表しました。その内容のもっとも大事で、基本的なことは、この2つの団体がボールの飛距離がだんだん伸びてきていることを大変憂慮しているということです。データとしては、

1930年代から1990年代は、徐々に飛距離が伸びて、1995年までに米PGAツアーの飛距離上位20人の平均飛距離は278ヤードで、ツアー全体の平均は263ヤードだった。

1990年代半ばから2003年までは、クラブとボールの技術革新がすすみ、米国と欧州ツアー全体の平均飛距離は286ヤードで、飛距離上位20人の平均飛距離は303ヤードになった。

2003年から2019年の間については、米国と欧州ツアー全体の平均飛距離は294ヤードで、飛距離上位20人の平均飛距離は310ヤードになった。

1995年当時より比較して、2019年では飛距離平均で31ヤードも伸び、トップ選手に限っても32ヤード伸びています。もちろん、この飛距離のアップは、クラブとボールだけの問題ではなく、選手のトレーニング方法やコース条件の向上も原因として考えられます。

選手の飛距離がだんだん伸びてきて、それに対応するため、コースのほうもだんだん長くなってきました。このレポートでは、このことがゴルフの将来にとって決してよくないと指摘しています。その理由として、設計段階で非常に考えて配置されていたバンカーなどのハザードを、選手が楽々オーバードライブするためプレーが単純になる。

また、コース面積が広くなるので、購入する土地も大きくなり、コース造成にも費用がかさむ。広範囲のコースをメンテするため費用が余分にかかる。しかし、その費用は最終的にプレーヤーが負担することとなり、また初期コストと維持費が膨らんだゴルフコースの経営は、現在非常に厳しくなっています。

そこで考えられるのが、飛距離をおさえるためボールやクラブに対する規制で、その規格を1980年代や1990年代に戻すということですが、これについてはUSGAとR&Aは消極的です。

この調査結果は、今後どうしていくという明確な方向性を示すものではなく、ボールやクラブのメーカー、ゴルフ場経営者、ツアープロにも意見をどんどん出してほしい。飛距離がどんどん伸び、その弊害が顕著となっている現状のままでは、ゴルフという競技の将来がけっして明るいものとはならない。どうしたらいいのだろか、意見を出し合いましょうと。

かつては、コースレイアウトがすばらしく、プロのトーナメントも数々開催されたコースが、ホール延長のための改修余地がないため、最近のプロの飛距離からすると短すぎるという理由で、トーナメントの開催が見送られ、そのためコースの評価・価値がだんだん落ちていくという現象も多く見られます。

USGAとR&Aが考えている対策案として、ローカル・ルールの導入があります。そのローカル・ルールによって、特定のゴルフコースやトーナメントが、飛距離が制限されたクラブやボールの使用を許可するというものです。あるいは、比較的距離の短いコースは、飛距離を抑えたボールをトーナメントで使用できることとするなどです。

確かに、飛ばし屋と呼ばれる選手のドライバーショットを見ることは、ゴルフの醍醐味のひとつですし、その飛距離がどんどん伸びていくのは、ファンとしてわくわく感があります。また、よく飛ぶドライバーが発売されたと聞けば、すぐにゴルフショップに行って試打してみたくなります。しかし、ゴルフの将来のことを考えたときに、我々ゴルフファンもこのへんでその態度を、少し見直す必要があるようです。