米PGAツアー 再開に向けて

米PGAツアーは、今から約1か月後の6月8日が初日となる「チャールズシュワブチャレンジ(the Charles Schwab Challenge)」から再開し、この大会を含む4試合(4週)は無観客試合としておこなうことが決定していることはすでにお伝えしております。

無観客でおこない、試合はテレビ中継されるのですが、主催者側にとっては、どう大会を運営し、安全を担保するため、いかにソーシャルディスタンスを保って各選手がプレーしていくのか、手探りの状態となります。以下いろいろな問題が見えてきていますし、また興味深い事実も紹介されています。

米PGAの通常の大会では、大会期間中の来場者のチケット販売額は約80万ドルだそうなので、無観客でおこなった場合その分収入が減ります。また、来場者が会場で飲み食いしたり、ゴルフ用品を買ったりすることによる収入もゼロとなります。

しかし、それよりも大会主催者として頭を悩ませるのが、プロアマ戦をどうおこなうのかということです。選手が、大会のスポンサー関連会社の役員、ゴルフ場関係者、その土地の名士やセレブと一緒にプレーするのですが、主催者側は1組あたり平均約3万ドルの収入があるといいます。参加するアマチュアがひとり平均1万ドル(約100万円)払っている計算です。日本の男子プロ・女子プロのトーナメントでプロアマ戦に出場する場合のプレー費用の相場を私は知りませんが、米PGAの約100万円というのは、とても高額で、文字通り「けた違い」ではないかと思います。

もちろん、この金額は平均ですから、世界ランキング上位の選手とラウンドする場合はもっと高額になるでしょうし、知名度のない選手の場合は少なくなると考えられます。プロアマ戦は月曜日と水曜日におこなわれ、月曜日は28組、水曜日は52組組まれるので、収入総額は270万ドル(3万ドルx90)にも達します。ソーシャルディスタンスを保ち、そして参加者にも満足して帰ってもらえるプレー運営方法とは? もちろん、アマチュア参加者はウィルス検査で陰性であることが条件となりますが、本当に頭が痛いところです。

また、ゴルフトーナメントは多くのボランティアに支えられていますが、感染拡大を防ぐため、その数をどれだけ減らせるのかという問題もあります。また、ボランティアは高齢の定年退職者であることが多く、感染すると重症化しやすいという危険性もあります。

選手とキャディーは当然大会会場に入ることができるのですが、選手の家族はどこまで入場が許されるのか、コーチは? また、大会にはいつも大型のデモトラックで参加するクラブ用品メーカーのスタッフは入場できるのか?

メディア関係では、大会前の選手へのインタビューはどうおこなわれるのか、記者が多数集まれば、クラスター発生の危険性が高まります。各ラウンド後のインタビューは? 仮設のメディアセンターで記者ブースの間隔は十分確保されるのか?

プレーする選手にとっては、コースの攻め方が変わってくる可能性が指摘されています。最終ホールは、いままで大型の仮設スタンドに囲まれていましたが、今回はそのスタンドがないので、攻める風景がまったく異なって見えます。また、仮にスタンドの中に打ち込んでも、ノーペナルティーで指定された区域より打つことができましたが、今回はスタンドに入っても構わないという気持ちで振り切ることができません。もっと保守的な攻め方になるでしょう。

また、一緒にラウンドした選手あるいはキャディーが、ラウンド後のウィルスチェックで陽性となった場合、その選手が棄権扱いとなるのは当然でしょうが、同伴競技者はどういう扱いになるのか、プレーを続けることができるのか?

ツアー再開に向けて、いろいろな疑問点、問題点があるのですが、それでも決断した以上、前に進んでいって、大会を実現していってもらいたいです。ファンとしてもしっかり応援していきたいと思います。