今年に入ってコロナウィルスが世界中で猛威を振るい、7月に予定されていた男子「全英オープン」は中止となりました。160年にわたる大会の歴史のなかで、2度の世界大戦のときは中止になっていますが、ちょうど今から100年前スペイン風邪が欧州で蔓延し、欧州全体で5000万人もの人の命が奪われたときも開催された「全英オープン」です。
アメリカを舞台として開催される残りのメジャー大会3つは一時延期が決まりましたが、8月に「全米プロ選手権」が、9月に「全英オープン」がしっかりと開催されました。そして最後に残った「マスターズ」も11月12日から開催されます。
全英オープンが中止になった経緯を、大会を主催するR&Aのチーフエグゼクティブ・マーチン スランバー氏がゴルフ雑誌に語っています。
その内容によると、R&Aは7月開催を9月に延期して同じ会場(ロイヤルセントジョージ)で開催できないか模索しました。しかし、9月になると学校が始まってしまい、ロイヤルセントジョージで開催されるときはいつも借りている周辺の学校の施設(駐車場など)が借りられないことなどがわかり、断念しました。
また、「全英オープン」を開催したとしても、コロナウィルスの感染状況の中で、出場資格を得ることができる予選大会が支障なくおこなうことができるのか、出場資格があるのに各国が課す渡航制限などの理由から大会に出場することができない選手が出てきたりすることはないのか。歴史と伝統のある大会のトロフィーを手にするにふさわしいチャンピオンが選ばれる環境が整うのか。この点も重要視したようです。
しかし、巷間言われているように、大会全体にR&Aが保険をかけていて、中止であれば準備段階を含めて発生した費用はすべて保険でカバーされるが、延期として、その後追加で発生する莫大な費用については条項がなく、保険が適用されないことも中止の大きな理由でした。
3つのメジャー大会を中止にすることなく、延期し開催したアメリカの米PGAやUSGAなど主催者については、その決断力と実行力をとても称賛しています。
しかし、アメリカとイギリスの国土の大きさの違いも実行力に大きな影響を与えます。8月に開催された「全米プロ選手権」のときには、主催者はロッカールームにおいても選手がソーシャルディスタンスを十分保てるよう、仮設の大きなロッカールームをゴルフ場のそばに作りました。
これには本当に驚いてしまいますが、ここまですることができるのは、土地と資金が豊富なアメリカ合衆国に身を置く米PGA、USGAなどの団体だけであるのは間違いありません。