今週の米PGAツアー「ロケットモーゲジ クラシック」に、韓国人選手のサンジェイ イム(23歳)とシーウー キム(26歳)の二人の選手が出場し、3日目のラウンドを終えて好位置につけています。
サンジェイ イムは現在世界ランキング26位で、シーウー キムのほうは50位と、ともに2週間後に開催される今季最終メジャー大会「全英オープン(7/15-18)」への出場資格を有しています。
しかし、ふたりとも「全英オープン」への出場を辞退すると発表しました。権威がある4大メジャー大会へ出場資格があるのに出場しないということは、プロゴルファーの決断としては非常にめずらしいことで、周囲より非難されることもあります。
それなのに、彼らがなぜ「全英オープン」に出場しないかと言えば、7月29日から8月1日の日程で開催される「東京オリンピック」に標準を合わせて今後準備をしていくためです。
これまで、メジャー大会をオリンピックに優先させる発言をしたトッププロは多数いましたが、彼らのように、その反対の発言・行動をした選手はいませんでした。
その理由については、韓国のある事情が大きく関係しています。韓国では18歳から28歳までの男性に2年間の兵役が課せられていますが、もしオリンピックでメダルをとれば、国民として顕著な活躍をしたという理由で兵役が免除されるためです。アスリートとしてのキャリアの中で2年間というブランクは選手生命を左右しかねません。
ご存じの方も多いと思いますが、裵相文(Bae Sang Moon)という選手がいます。2008年、2009年に2年連続で韓国ツアーの賞金王となり、2011年には日本に渡ってきて、ツアー3勝して賞金王のタイトルをとったのち、その年に米PGAツアーカードを獲得し、2012年より米ツアーで活躍した選手です。2013年に1勝、2014年に1勝をあげ、その後の活躍が期待されていましたが、2015年から2年間兵役に服しました。
米PGAはこの2年間を病気怪我に準ずる扱いとしたために、ムン選手は兵役終了後にすぐ米ツアーに復帰することができましたが、これまでのような結果を残すことができずに、現在は米ツアーカードを失った状態です。
ムン選手のような能力の高い選手でも、2年間の兵役によるブランクを克服してもとのように米PGAで活躍することは難しいため、サン ジェイイムとシーウー キムの両選手は、2年間の兵役が免除されるオリンピックのメダル獲得に集中する判断をしました。
このふたりの東京オリンピックにかける思いは、出場する他の選手より相当大きいので、ひょっとすると表彰台で韓国の国旗が1つか2つ大きくはためくかもしれません。