来年2月3―6日の日程で、「サウジ インターナショナル」が開催されます。国際プロスポーツに力を入れ始めたサウジアラビアが、2019年から欧州ゴルフツアーのひとつとして開催しはじめて、今年が4回目の大会となります。この大会を盛り上げるために、米PGAツアーで活躍するトップ選手に多額の出演料(appearance fee)を支払って招待し、評価を高めてきました。初回と3回目の大会ではダスティン ジョンソンが優勝し、2回目の大会は2010年の「全米オープン」を制したグラン マクダウェルが優勝しています。
今まで「サウジインターナショナル」は欧州ツアー(現在名DPワールドツアー)のひとつの大会としておこなわれてきたので、米PGAツアーでプレーする選手は簡単な手続きで出場することができましたが、来年の大会は状況が一変しました。「サウジインターナショナル」がDPワールドツアーから移り、アジアツアーの大会として開催されるのです。
サウジアラビア系のファンドが、アジアツアーに多額の出資をおこなって、「サウジインターナショナル」をアジアツアーに移管し、旗艦大会と位置付けたためです。そして、このサウジ系ファンドが、現在米PGAツアーでプレーしている有力選手を引き抜いて、米PGAツウアーとは対立するチーム戦による新リーグを創設しようと動いているからです。
新リーグ創設関係者が現地で選手と接触し、多額の移籍金を武器に新リーグへの移籍を説得する機会になることを恐れた米PGAは来年の「サウジインターナショナル」に出場を予定する選手に対して、勝手に出場することを許さず、事前に出場許可申請をおこなわせました。そして、このほど申請している30名の選手に対して、条件つきで出場を認める決定をして、選手に通知しました。
今回申請をおこなって出場を認められた主要な選手には、ダスティン ジョンソン、ブライソン ディシャンブー、フィル ミケルソン、セルジオ ガルシア、ヘンリック ステンソンらが含まれています。そして、気になる条件のほうは、「サウジインターナショナル」の開催と毎年日程と重なってしまう米PGAツアーの大会「AT&Tペブルビーチ プロアマ」に対して将来の出場を約束させるというものでした。
過去5年の間に少なくとも1度出場したことのある選手は、必ず2023年か24年の大会のどちらかに必ず出場すること。いままで「AT&Tベブルビーチプロアマ」に出場したことのない選手は、2023年、24年、25年の大会に少なくとも2回は出場することというものです。この決定は前例として今後踏襲されるものではなく、状況がかわれば変更もあり得るという但し書きがついています。
特定の選手が毎年出場して現地で厚いもてなしを受け、新リーグのほうに移籍せざるを得ないような状況に追い込まれることを防ぐ狙いがあるかもしれません。米PGAツアーと新リーグを創設しようというサウジのグループの駆け引きは来年も続いていきそうです。