先週のメジャー「全米オープン」で優勝したブライソン ディシャンブーの美談が伝わってきた。
少し状況を説明すると、全米オープン最終日、ひとつ前の組でまわるローリー マキロイが最終ホールで短いパットをはずしてボギーとしたため、1打差で首位に立ったブライソンは18番をパーであがれば優勝がきまる。しかし、ティーショットを大きく左にまげ、ウェストランドからの第2打はスイングするとクラブがうしろの木に当たる最悪の状態だった。
ボギーの可能性も否定できないなか、しゃくったようなスイングから打ち出されたボールは低い弾道で飛んでいきバンカーに入ってしまった。ピンまでの距離は55ヤードもあるところだ。
しかし、ここからディシャンブーはスーパーバンカーショットを放ち、ピンまで1メートル弱の位置につけた。
一方、ブライソンの同伴競技者でその時点で5位の位置にいたフランスのマシュー パボンは18番ホールでブライソンより先にパーオンした。ブライソンがグリーンにあがってきてから打ったバーディーパットは、入らずにブライソンのボールよりピンに近いところに止まった。
通常であれば、先にパットしてプレーを終え、ブライソンのウィニングパットのおぜん立てをするところであるが、パボンは自分のボールの位置にマークをして、ディシャンブーに先に打たせる意思をみせた。
ディシャンブーは1メートル弱のパットを慎重に入れ、全米オープン2勝目をきめた。グリーンを囲んだファンが大きな歓声をあげるなかで、パボンは静かに自らのパットをおこなった。
パボンとしては、初めてメジャー大会を最終日最終組でまわり、もし最終パーパットを入れれば単独5位となるが、はずせば松山英樹と並んで5位タイとなり賞金も減る。自分のことに精一杯で、ディシャンブーのことを考える余裕がなかったらしい。
プレーを終えたあと18番グリーン上でパボンは、ディシャンブーに「申し訳ない。自分が先にパーパットを終えるべきだった。」と謝った。
すると、ディシャンブーからは意外な答えが返ってきた。「先にパットをしてくれなくて礼を言うよ。(ルール上はピンから遠い人から打つことになっているのに)もしあなたが先に打ったならラインの一部を僕に見せることになり、それはローリーにとってフェア(公平)ではないし、僕もそのようなかたちで勝ちたくはなかった。」
勝つなら正々堂々とプレーして勝ちたかったというディシャンブーの心意気に感服である。