先週おこなわれたパリ オリンピックの男子ゴルフは、金メダルをアメリカのスコッティーシェフラーが、銀メダルを英国のトミー フリートウッドが、銅メダルを松山英樹が獲得して幕を閉じた。
韓国のトム キムは13アンダーの8位で4日間のプレーを終え銅メダルを獲得した松山には4打及ばなかった。キムは最終日ホールアウト後、スコアを記入して提出する仮設オフィスの中で涙をみせ、そのことが話題となった。
米ツアーで現在プレーするキムは弱冠22歳だが、すでに3勝をあげ将来が期待できる選手のひとりである。昨年10月に3勝目をあげたときは21歳3か月の年齢で、米ツアーで3勝目をあげた年がタイガー ウッズに次ぐ若さとして大きく取り上げられた選手だ。
そのキムがホールアウト後に涙をみせたわけは、韓国の徴兵制度にある。韓国のすべての男子には兵役の義務があり、28歳までに18―21か月間入隊し、訓練を受けなくてはならない。が、もしオリンピックでメダルを取れば、顕著な功績をあげたという理由で兵役が免除されるのである。
先月の「全英シニアオープン」で優勝した韓国のK.J.チョイ(54歳)は、かつて米PGAツアーでプレーして通算8勝をあげ、現在米シニアツアーでプレーしている選手であるが、兵役を完全に済ませてからアメリカに渡り勝利を重ねた。
しかしゴルフがどんどんアスリート化し低年齢化してくると、28歳までに約2年間も拘束されることは選手生命を脅かすことになる。実際、米PGAツアーで2勝をあげた後に兵役についたベ サンムン選手(38歳)も、兵役を終えて米PGAツアーに戻ってきたが実績をまったく残せていない。
なので、キムもなんとかメダルを目指して頑張ってプレーしたが及ばなかった。流した涙は今後ずっと抱きつづけなくてはならない不安を、今回払拭することができなかった無念の涙なのであろう。
まだ若いキムには、4年後のロスアンゼルス オリンピックに出場するチャンスがめぐってくるかもしれない。2年後日本で開催されるアジア大会での金メダルでも兵役が免除されるようだ。キムの今後の動きに注目である。