米PGAツアーでは、毎年2月の初旬にアリゾナ州スコッツデイルで「フェニックス オープン」が開催される。
この大会は4日間で70万人以上というけた違いの観客が訪れることで有名で、16番(パー3)ホールは周囲を観客用のスタンドで囲み、まるでひとつのスタジアムのようなつくりとなっている。また、ふつうゴルフ観戦するときは、選手がアドレスに入ったら音をたてないようにするのがマナーであるが、このホールだけ観客は目いっぱいの音をたてる。そして、選手がティーショットを打ってグリーンをはずそうものなら、ブーイングが鳴りやまない。米ツアーのなかでも特別な大会である。
ただ、回を重ねるごとに観客のマナーが悪くなり、酔ってスタンドからコースの中へ落ちたり、観客どおしで喧嘩を始めたり、会場が騒然となり始めた。
昨年の大会終了後の記者会見では、2つのメジャータイトルをもち、昨年のライダーカップのキャプテンを務めたベテラン選手ザック ジョンソン(48歳)が、観客のふるまいを見かねて苦言を呈した。
「わたしはこれまでツアーで21年間プレーしてきたが、大会の様子は度を越して不適切なものなってきている。そして観客の言動に選手として身の危険を感じることがある。観客のほうもこのままの状態が続けば、大怪我をする人やひょっとすると死者がでることにもなりかねない。大会運営者が早急に対策をとることをのぞむ。」
大会が約4か月後にせまってきた今週、主催者から昨年のような大会にならぬように安全に関する対策が発表された。
その中には、大勢の観客の移動の流れをスムーズにするため、大会入口をもうひとつあらたにもうける。入場のときの混雑をなくすためチケットはスマホの電子チケットとする。コース内のギャラリー用通路の幅を広げる。コース内の警備員の数を増員する。
ゴルフは紳士のスポーツ、マナーのスポーツといわれてきて、ギャラリーにも観戦マナーが要求されてきた。しかし時代は徐々にかわって、大酒飲んで大声で騒いて、欲求不満のはけぐちにまわりの人に喧嘩をしかけるメジャーリーグ野球観戦のようになってきたのかもしれない。