PGAツアーのジェイ モナハン コミッショナーは2023年6月突然、それまで激しく敵対していたLIVゴルフと一緒に新しいツアーを創設し、そこにはDPワールドツアー(旧欧州ツアー)も加わると発表した。
それまでは各陣営の選手もお互いを批判しあっていたので、寝耳に水のこの発表に選手の間には激しい動揺が走った。23年の末までにはツアースケジュールも発表される予定であったが、2025年に入った現在もどんなかたちでツアーが運営されるのか具体的な発表はされていない。
米PGAツアーのメンバーはいろいろ思うことはあろうが、所属するツアーのトップについて自らの意見を言うことは、なかなかできることではない状況のなか、ゴルフ界の大御所が、コミッショナー批判をおこなったことがニュースとして取り上げられている。
その大御所とは、かつてタイガー ウッズのスイングコーチもつとめ、現在でも少数の選手を指導している伝説的なコーチ、ブッチ ハーモン(91歳)である。
ハーモンの主張は、今から約4年前にサウジアラビアの国営ファンドから財政的支援を受けるグループが新たなプロゴルフツアーをつくる動きをみせたときに、米PGAツアーがもっと真剣に向き合って対応すべきであったというものである。
米PGAツアーには、男子プロゴルフに関しては自分たちがナンバーワンで、他に自分たちに匹敵するツアーはないし、そんなものが新しくつくれるはずがないという傲慢さがあったとハーモンは指摘している。
2021年10月にLIVゴルフは新ツアーをスタートさせ、試合を消化するいっぽうで潤沢な資金をもとに、米PGAツアー側から有力な選手を超破格な契約金で引き抜きはじめた。危機感を抱いた米ツアーはさまざまな手段で有力選手の囲い込みに奔走するはめに陥ってしまう。
もともと非営利団体として発足した米PGAツアーが、巨額の資金援助をうけるLIVゴルフと長期にわたり、訴訟合戦も含めて対立し続けることは金銭面で非常に困難で、米ツアーはLIVゴルフと共存する道を選択せざるをえなくなった。
しかし、現在もLIVゴルフの選手と米PGAツアーの選手が同じ大会に出場する具体的な道筋がまったく見えてこない。一説には、LIVゴルフに移籍した選手が受け取った巨額な契約金が大きな障害となっているという。米PGAツアー所属の選手は、一緒にまた同じツアーでプレーをするのであれば、受け取った契約金を返還するか分配しろと主張している。LIVゴルフ移籍組はそれを拒否して、お互い譲歩する気配をまったくみせていない。
ドン詰まり状況になったおおもとは、ジェイ モナハン コミッショナーの初動対応のまずさにあるというハーモンの主張には、確かに説得力がありそうだ。