先日おこなわれた「全米プロ選手権」では直前に抜き打ちテストがおこなわれ、ローリー マキロイ(36歳)が使用しているドライバーが不適合と判定された。その結果が大きく影響したのだろう、マキロイは47位タイの成績に沈んでしまった。
マキロイは4月の「マスターズ」に優勝してキャリアグランドスラムを達成した。また今シーズンに入ってマスターズまでに「ペブルビーチ プロアマ」と「プレーヤーズ選手権」の2つの格上げ大会(signature event)に勝っており、「全米プロ選手権」でも優勝候補のひとりにあげられていた。
マキロイのクラブが不適合と発表されたとき、私などはやはりプロというものはルールのぎりぎりのところを攻めるんだな。そうでもしないと勝てないほど厳しい世界なのかもしれないと思ってしまったが、最近メディアではこれは意図したことではなく、物理的におこってしまう現象であるという解説がされている。
マキロイのドライバーは大手クラブメーカー、テイラーメイド社が提供している。出荷時には間違いなくルール適合品として手渡されても、プロが練習の際超高速なヘッドスピードで長時間にわたってボールを打ち続けると、フェースの表面が摩耗してうすくなり不適合な状態になってしまうということらしい。
ドライバーが適合品かどうかは、インパクト時にボールとクラブフェースがどれくらいの時間接触しているかを高度な測定装置を用いて測定する。ボールとフェースの接触時間が長ければ長いほど、クラブヘッドの力がボールに多く伝わる。多く伝わればそれはボールの初速スピードアップとなって、飛距離がのびることになる。なので現在は接触時間に制限を加えている。
クラブフェースの厚みがボールとの接触でだんだん摩耗していくと、フェースの弾性がおおきくなり、インパクト時にボールによってフェースが押し込まれる量は多くなる。そうするとフェースとボールの接触時間は長くなる。長くなればより多くのエネルギーがボールに伝わり、ボールは遠くまで飛ぶ。
しかし、この現象は高速なヘッドスピードを生み出すことができるプロが、何万回何十万回とドライバーを振るなかで発生するものなので、われわれアベレージゴルファーにはまったく無縁の話である。
ただわれわれは、マキロイが意図的に不適合なクラブを使用して勝とうとしたのではないかと邪推するのではなく、プロが勝つためにどれくらいの数のゴルフボールを練習で打っているのか、そこに敬意を払うべきかもしれない。